ハイエンドギターは本当に値段の価値があるのか、5本買った僕が答える

「30万円のギターと5万円のギター、そんなに違うの?」

ギターを弾かない人からよく聞かれる質問です。正直に言うと、僕も最初はそう思っていました。高校の文化祭で初めてギターを手にしてから18年。新潟で会社員をしながら週末にセッションに通う、どこにでもいるアマチュアギタリストの僕が、気づけばハイエンドギターを5本も抱えている。我ながら笑ってしまいます。

僕は高橋涼介、34歳。新潟市内のIT企業でWebエンジニアをしています。20代後半でSuhrのCustom Classicを購入したのが運命の分かれ道でした。あのとき「ちょっと奮発して良いの買ってみようかな」くらいの気持ちだったのに、今では5本のハイエンドギターに囲まれる生活を送っています。

この記事では、実際にハイエンドギターを5本買った僕が、本当に値段に見合う価値があるのかを正直に書きます。結論から言えば「ある」のですが、それは単純に音が良いからではありません。

そもそもハイエンドギターとは

価格帯の目安

ハイエンドギターに明確な定義はありませんが、一般的には以下のように分けられています。

  • 国産ブランド:20万円以上
  • 海外ブランド:30万円以上

ライブUtaTenでも紹介されているように、高品質なパーツや厳選された木材が使われているギターがハイエンドと呼ばれます。ただ、僕の感覚で言うと「30万円を超えたあたり」から明確にモノが変わる印象です。

10万円台のギターと30万円のギターの差は大きい。でも30万円と60万円の差は、正直なところ音だけでは説明しにくい部分もあります。このあたりの話は後で詳しく書きます。

代表的なブランド

ハイエンドギターの世界は広いですが、僕が実際に触れてきたブランドを中心に紹介します。

ブランド価格帯の目安特徴
Suhrアメリカ35万〜80万円モダンなサウンドと抜群のプレイアビリティ
Tom Andersonアメリカ40万〜90万円独自仕様へのこだわりと柔らかいトーン
Gibson Custom Shopアメリカ50万〜100万円超ヴィンテージの再現と伝統の継承
Fender Custom Shopアメリカ50万〜100万円超職人の手仕事による一点モノの魅力
Mayonesポーランド25万〜60万円芸術的なルックスとタイトなサウンド

他にもPRS Private StockやJames Tylerなど挙げればキリがありません。ただ、上の5ブランドは日本の楽器店で比較的手に取りやすく、試奏の機会も多いはずです。

僕が買った5本のハイエンドギターたち

1本目:Suhr Custom Classic(購入時約38万円)

ハイエンドの沼に引きずり込んでくれた張本人。購入のきっかけは、東京出張のついでに寄ったお茶の水の楽器店で何気なく試奏したことでした。

弾いた瞬間、「なんだこれは」と声が出ました。

それまでメインで使っていた12万円のフェンダー・ジャパンのストラトも気に入っていたんです。でもSuhrを弾いた後に持ち替えたら、まるで厚手のゴム手袋をはめたまま弾いているような感覚になりました。Suhrのネックはとにかくレスポンスが速い。指の動きがダイレクトに音になる感じです。

Suhrの特徴はオリジナルピックアップの高域の抜け。クリーンで弾くと、冬の朝の空気みたいに澄んだ音がします。歪ませると、しっかり芯が残ったまま太くなる。「モダン・ハイエンド」の教科書のようなギターです。

ノンスタックのシングルコイルにダミーコイルでハムキャンセルする方式なので、シングルコイルらしいキラキラした音を維持しながらノイズが少ない。これがライブの現場ではかなり助かります。

2本目:Tom Anderson Drop Top Classic(購入時約45万円)

Suhrと双璧をなすコンポーネント系ハイエンドですが、性格はかなり違います。

Tom Andersonのネックは、初めて握ったときに「え、柔らかい?」と錯覚するほど手に馴染みます。実際には硬いメイプルネックなのに、仕上げの精度と形状設計が絶妙で、ネックが手に吸い付くような感触。

サウンドの方向性もSuhrとは異なります。Suhrがシャープで明瞭なら、Tom Andersonはもっと温かくて丸い。スタック型のシングルコイルを採用しているので、ノイズに強い代わりに少し太めの出音になります。タップするとジャキッとした高音が出てくるのも面白いところです。

ジャズやブルース寄りのセッションではこちらを持ち出すことが多い。同じ「ストラトタイプ」でもSuhrとは完全に別人格の楽器で、この違いこそがハイエンドギターの面白さだと思います。

3本目:Gibson Custom Shop 1959 Les Paul Standard Reissue(購入時約62万円)

3本目にして、ついにレスポールに手を出しました。

エレキギター博士の記事にも詳しく書かれていますが、Gibson Custom Shopは「ギブソンの最上位グレード」として、熟練のクラフトマンがヴィンテージギターの再現に取り組んでいる部門です。1959年製レスポールのリイシューモデルは、まさにその真骨頂。

このギターの音は、一言で表すなら「とろけるチーズ」。歪ませたときの中音域がグッと前に出てきて、コードを鳴らすとすべての弦が溶け合うように一体化します。SuhrやTom Andersonのようなモダン系のギターとは完全に別世界の楽器です。

重量は4kgを超えるので肩がやられます。でも、この重さがあの音を生んでいると思うと、不思議と許せてしまう。ニトロセルロースラッカー仕上げの質感も独特で、弾き込むほどに塗装が馴染んで音が変わっていく楽しみもあります。コンポーネント系にはない「育てる喜び」がこのギターにはあります。

4本目:Fender Custom Shop 1963 Telecaster Relic(購入時約55万円)

「レリック加工」という、わざと使い込んだようなヴィンテージ感を出す仕上げが施されたテレキャスター。新品なのに何十年も弾き込んだような風格があります。

テレキャスターのハイエンドは、ストラト系のコンポーネントギターとは全く違う魅力があります。パキッとした高音のアタック感。カントリーやロカビリーだけじゃなく、最近のインディーロックにもよく合う音。シンプルな構造だからこそ、木材やパーツの質の差がダイレクトに出ます。

Custom Shopのテレキャスは、レギュラーラインのテレキャスとは鳴り方が全然違います。一音一音に奥行きがある。料理に例えるなら、インスタントの出汁と、昆布と鰹からちゃんと取った出汁の違いに近いかもしれません。

レリック加工は好みが分かれますが、僕はかなり気に入っています。新品特有の「傷つけたくない」というプレッシャーから解放されて、最初からガンガン弾き倒せる。実用面でもメリットがあるんです。

5本目:Mayones Regius 6(購入時約32万円)

ポーランドのハイエンドブランド。5本の中では一番お手頃ですが、コストパフォーマンスは飛び抜けています。

Mayonesは元々メタルやプログレッシブ系のギタリストに人気がありますが、Regius 6はクリーンの音も美しい。ボディのフレイムメイプルトップは芸術品のような木目で、眺めているだけで満足できます。

サウンドはタイトで分離感が良く、和音を弾いたときに各弦の音がくっきり聞こえます。5本の中で最も「現代的」な音がするギターです。

ポーランドという楽器製作のイメージが薄い国のブランドですが、1982年創業で歴史もしっかりある。少量生産で一本一本手作業という製作姿勢も信頼できます。「ハイエンドは欲しいけど、いきなり60万円は無理」という人には、まずMayonesから入るのも良い選択肢です。

安いギターとハイエンドギター、本当に何が違うのか

音の違いは「録音」では分からない

これは多くのギタリストが口を揃えて言うことですが、録音した音源を聴き比べても、ハイエンドギターと10万円台のギターの違いはほとんど分かりません。ブラインドテストをやったら、プロでも正解率は五分五分でしょう。

じゃあ何が違うのか。それは「弾いている本人の体験」です。

弦を押さえたときの指への返り方。ピッキングのニュアンスがどれだけ音に反映されるか。コードをジャラーンと鳴らしたときの倍音の広がり方。ボリュームを絞ったときのクリーンの美しさ。これらは録音には乗りにくいけれど、弾いている本人にはハッキリ分かります。

よく「上手い人は安いギターでも良い音を出す」と言われますし、それは事実です。でもハイエンドギターは、弾き手の意図をより忠実に音に変換してくれる。表現の「解像度」が上がる感覚とでも言えばいいでしょうか。

弾き心地が段違い

ハイエンドギターを弾いてまず驚くのは、ネックのフィニッシュとフレットの仕上げです。

  • フレットのエッジ処理が丁寧で、手が引っかからない
  • ネックの握り心地が均一で、ポジションを移動しても違和感がない
  • チューニングの安定性が高く、アーミングしてもすぐ戻る
  • 弦高をギリギリまで下げてもビビらない精度

安いギターでも調整次第である程度は改善できます。でもハイエンドギターは、箱から出した瞬間からこのレベルに仕上がっています。「弾きやすさ」にお金を払っている、とも言えます。

所有する喜びという無形の価値

身も蓋もない話をすると、ハイエンドギターには「持っている」こと自体の喜びがあります。

ケースを開けるたびにテンションが上がる。木目の美しさにうっとりする。「今日はどの子を弾こうか」と選ぶ時間が楽しい。これは実用性とは関係ない、趣味としての満足度の話です。

車が好きな人が高級車に乗るのと同じ。時計が好きな人が機械式時計を買うのと同じ。合理性だけでは説明できない部分に価値を感じられるかどうか。ここが、ハイエンドギターに「値段の価値がある」と思えるかどうかの分かれ目だと思います。

ハイエンドギターを買って後悔したこと

良いことばかり書いてきましたが、後悔もあります。正直に書きます。

  • ライブで使うのが怖くなる。 50万円のギターをライブハウスの狭いステージで振り回すのは、正直ヒヤヒヤします。ぶつけたらと思うと、自由に動けなくなることもある
  • 沼にハマると止まらない。 1本買って満足するつもりが、別のブランドも気になり始めて、気づけば5本。財布へのダメージは計り知れません
  • 周囲の目が気になる。 アマチュアなのにそんな高いギター使って、と思われてないかと妙に気になる時期がありました。今は開き直りましたが

特に2番目は深刻です。ハイエンドギターはブランドごとに個性がまったく異なるので、「こっちも試してみたい」という欲求が終わらない。ギター沼と呼ばれるゆえんです。

あと、これは完全に個人的な話ですが、5本もあると保管場所の問題も出てきます。新潟の冬は湿度が高いので、除湿剤やデシカントを入れたケースで管理するなど、メンテナンスにも気を使います。高い買い物だからこそ、維持にもコストと手間がかかる。この点は購入前に考えておいた方がいいです。

地方在住でもハイエンドギターを手に入れるために

僕は新潟に住んでいるので、東京の楽器店にふらっと行くわけにはいきません。地方在住のギタリストにとって、ハイエンドギターとの出会いはどうしても限られます。

ただ、工夫次第で道は開けます。僕が実践してきた方法を挙げます。

  • 地元の島村楽器やイシバシ楽器の店舗をこまめにチェックする。ハイエンドモデルの入荷は不定期なので、足を運ぶ頻度がモノを言います
  • デジマートやJギターなどの通販サイトで在庫を日常的にウォッチする。ただし通販でハイエンドを買うのは、よほど同モデルの経験がない限りリスクがあります
  • 東京・大阪への出張や旅行の際に、必ず楽器店巡りの時間を確保する。お茶の水、渋谷、心斎橋は外せません
  • ギター仲間やSNSのコミュニティで情報交換する。地方の個人経営楽器店に掘り出し物が眠っていることもあります

また、僕と同じ新潟在住のギタリストなら、新潟でハイエンドギターを探す際の情報をまとめたブログ「LoveMusic」が参考になります。新潟県内で試奏できる店舗情報やブランドごとの特徴がまとまっていて、地方で楽器を探す人にとっては助かる内容です。

地方に住んでいると不利に感じることもありますが、ネット時代のおかげで情報格差はだいぶ縮まりました。実際、僕が4本目のテレキャスターを買ったのも、デジマートで見つけて大阪の楽器店に電話で問い合わせたのがきっかけです。取り置きをお願いして、翌週の連休で弾きに行きました。

地方在住のギタリストは「すぐに試奏できない」というハンデを背負っています。でもその分、事前にしっかりリサーチしてから店に向かうので、衝動買いのリスクが減るという側面もあります。焦らず、自分のペースで運命の1本を探してみてください。

まとめ

ハイエンドギターに値段の価値はあるのか。5本買った僕の答えは「ある。ただし、音だけの話ではない」です。

録音した音だけ比較すれば、10万円台のギターとの差は正直微妙です。でも、弾いたときの指への感触、ニュアンスの出しやすさ、ケースを開けるたびに感じる高揚感。そういう「弾く体験そのもの」がまるで違います。

もちろん、全員にハイエンドギターが必要だとは思いません。5万円のギターで素晴らしい演奏をするプレイヤーはたくさんいます。大事なのは、自分が何に価値を感じるかです。

もし今、楽器店でハイエンドギターを前に悩んでいる人がいたら、迷わず試奏してみてください。弾いた瞬間に「あ、これだ」と分かることがあります。僕がSuhrを初めて弾いたときのように。

最終更新日 2026年6月1日 by landru

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