若手の「話が長い」問題、どう指導する?研修講師の現場メモ

はじめまして。
中小企業やスタートアップ向けにコミュニケーション研修を提供している、菅野涼平と申します。
大手電機メーカーで15年、法人営業と営業マネージャーを経験してから、この道に入りました。

研修現場で管理職の方と話していると、必ずと言っていいほど出てくる相談が一つあります。
「うちの若手、話が長くて困っているんです」というものです。

会議で発言が延々と続く。
報告に来た若手の話を聞いていたら、5分経っても本題に入らない。
「結論から言うと?」と促しても、なぜか元の説明に戻ってしまう。
そんな光景に心当たりがある管理職の方は、少なくないはずです。

一方で、私自身も入社1年目の頃は「お前の話は長い、何が言いたいのか分からん」と直属の上司にかなり怒られていました。
だからこそ、若手の側にどういう心理が働いているのかも、少しは分かるつもりでいます。

この記事では、若手が話が長くなってしまう構造と、私が研修現場で実際に効果を感じた5つの指導アプローチをお伝えします。
明日から使える具体的なやり方まで踏み込みますので、若手指導の引き出しを増やしたい方の参考になれば幸いです。

若手の「話が長い」問題は、なぜ管理職を悩ませるのか

現場で起きている典型パターン

研修先の管理職の方から聞く「話が長い若手」のエピソードには、いくつかの共通パターンがあります。

まず多いのが、「時系列で全部話す」タイプです。
「今日の朝、A社の担当者から電話があって、そこでこう言われて、それに対して自分はこう答えて、そのあと社内の◯◯さんに相談して……」という具合に、起きた順番に律儀に説明していく。
聞き手は、いつまで経っても結論にたどり着けません。

次に多いのが、「予防線を張りすぎる」タイプ。
「これは、あくまで自分の推測なのですが、もしかしたら違うかもしれませんが、一応、可能性としてはあるかなと感じたので、念のためお伝えするのですが……」という前置きが延々と続く。
本題の前に息が切れる感覚は、指導する側なら覚えがあるはずです。

3つ目が、「聞かれてもいない情報を足す」タイプ。
「そのA社の件なんですけど、ちなみにA社の担当者って前職はB社にいた方で、そのB社が去年うちと取引があって……」と、本筋と関係ない周辺情報を足していく。
本人は「関連情報として親切のつもり」なのが厄介なところです。

まずは、この3つのタイプのどれに近いのかを見立てるだけで、指導の切り口が変わってきます。

データで見る「話が長い」問題の深刻さ

「話が長い」は本人の問題に見えて、実はチーム全体の生産性に効いてきます。
リクルートマネジメントソリューションズが2025年に発表した「職場における新入社員育成の実態調査」(1,226名対象)では、育成担当者が新入社員育成で苦労している項目のトップは以下のようになっています。

育成担当者が苦労する項目割合
メンタル・モチベーション管理26.1%
考え方・価値観のギャップ23.7%
効果的な関わり方16.2%

「伝え方の指導」は、単なる会話術の話ではなく、メンタル・世代ギャップ・関わり方の問題とセットで扱わないと空回りするということが、このデータからも読み取れます。

もう一つ、参考になる調査があります。
エン・ジャパンが2024年に実施した「上司・部下間のコミュニケーション調査」(1,838名対象)では、部下側が上司に対して感じる課題の1位が「指示・指導がわかりづらい」で48%。
「話が長い」問題は若手だけのものではなく、上司側の伝え方も同じ土俵に乗せられているという事実は、押さえておいた方がいいと思います。

なぜ「注意して直る」ものではないのか

多くの管理職の方は、話が長い若手に対して「もっと短く」「結論から」と繰り返し伝えます。
私自身、若手時代に耳が痛くなるほど言われてきました。
ただ、注意で直らないのには理由があります。

若手からすると、「短くする」という抽象的な指示は、正体不明の呪文と同じです。
何をどう削っていいのか、判断基準を持っていないからです。
「これを省いたら、あとで説明不足だと怒られるかもしれない」という不安が消えない限り、話は短くなりません。

必要なのは「短くしろ」という指示ではなく、「短くしても大丈夫だ」と本人が思える型と経験のほうです。

若手の話が長くなる、3つの根本原因

原因1:「省いたら怒られる」という恐れ

これが最大の原因です。
若手の頭の中では「情報を省く=手抜き、怠慢」と結びついていることが多い。
社会人経験が浅いうちは、「どこまで話せば十分か」の見立てが立ちません。

だから、とにかく全部話しておこうとする。
背景も、経緯も、自分の解釈も、念のための補足も。
本人にとっては「網羅性=誠実さ」なのです。

私自身、営業1年目の頃はまさにこの状態でした。
所長から「用件だけ言え」と言われても、「省いたら勝手に判断したと思われる」という怖さが先立って、結局全部話してしまう。
不安が言葉を長くしていたのだと、今なら分かります。

原因2:伝え方の型(フレーム)を知らない

これも大きい原因です。
学生時代、レポートや卒論では「結論から」ではなく「背景→展開→結論」で書くよう指導される人が多い。
論文の型で会話をしてしまうと、当然、話は長くなります。

社会人の伝え方には、いくつか定番の型があります。
中でも汎用性が高いのが、PREP法です。
Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の順で話すシンプルなフレームで、日本の人事部の解説記事でも「結論から話すことで説得力のあるコミュニケーションが可能になる」と紹介されている、定番中の定番です。

この型を知らないまま「短く話せ」と言われても、若手はどうすればいいか分からない。
まず型を教える。
話はそれからです。

原因3:ゴール設定ができていない

3つ目が、そもそも「今回の話で何を得たいか」が本人の中で言語化できていないケース。

  • 判断してほしいのか
  • 承認してほしいのか
  • ただ共有したいだけなのか
  • 相談に乗ってほしいのか

これが定まっていないと、話は必ずぼやけます。
たとえば「相談」のつもりなのに、いつの間にか「判断を仰いでいる」ような話し方になっていて、上司側も「これはどうしろってこと?」と混乱する。

ゴールが定まっていない状態で話し始めるのは、地図を持たずに道案内をしているようなものです。
本人が話しながら道を探しているから、聞き手も置いていかれる。
これは若手のセンスの問題ではなく、話す前に一手間かけているかどうかの差でしかありません。

現場で効いた指導アプローチ5選

私が研修と1on1コンサルで実際に効果を感じた、5つの指導アプローチを紹介します。

アプローチ1:報告冒頭に「今日の話のゴール」を一言つけさせる

これがもっとも即効性のあるやり方です。
やり方はシンプルで、若手が話し始める前に、必ず「今日は何の話か」を一言添えさせます。

  • 「A社の件で、判断をお願いしたいです」
  • 「B社の状況を共有だけさせてください」
  • 「進め方に迷っているので、相談させてください」

この一言があるだけで、聞き手の集中モードが切り替わります。
「判断依頼なのか、共有なのか」で、聞く姿勢がまったく違うからです。

若手側にも変化が起きます。
「判断をお願いします」と自分で宣言した以上、判断に必要な情報だけに絞ろうと意識が働く。
ゴール設定が、話の長さを自然に決めてくれるのです。

導入する際のコツは、「無理に短くしろとは言わない」こと。
「話の頭に、今日のゴールだけ一言足そう」というルールにすると、若手も抵抗なく受け入れてくれます。

アプローチ2:PREP法を、日常メールで練習させる

いきなり口頭でPREP法を使うのはハードルが高い。
まずは書き言葉で慣れさせるのがおすすめです。

具体的には、社内チャットやメールで報告を送るとき、必ず1行目に結論を書くルールにする。
たとえば、こう指導します。

  • 1行目:「A社の見積もりについて、値引き幅を10%まで拡大したいです」(結論)
  • 2行目:「理由は、競合B社が同水準の提案をしており、失注リスクが高いためです」(理由)
  • 3行目:「先週のミーティングでも、担当者から価格面のコメントが3回ありました」(具体例)
  • 4行目:「そのため、10%までの値引きをご承認いただけないでしょうか」(結論の再提示)

書き言葉で1週間もこの型を続けると、口頭でも自然と同じ順番で話せるようになる若手が増えます。
書けないことは、話せません。
逆に言えば、書けるようになれば話せるようにもなる、ということです。

アプローチ3:「結論2行メモ」を持たせる

日経クロステックの記事には、「話が長くて分かりにくい」と上司から指摘された人向けに、「話す前に結論を2行程度でメモに書き出す」というシンプルな対策が紹介されています。
これは本当に効きます。

やり方は、報告や相談に行く前に、A5サイズのメモに以下2行だけ書かせるルールにする。

  • 1行目:今日のゴール(判断・承認・共有・相談のどれか)
  • 2行目:結論(あるいは相談したい論点)

たったこれだけです。
書く時間は1分。
それでも、この1分があるかどうかで話の長さは劇的に変わります。

私の研修受講者のある若手は、このメモを1ヶ月続けたところ、上司から「話が短くなった」と言われたそうです。
本人いわく、「メモを書くと、書いてない情報は口頭で足さなくていい気がしてくる」とのこと。
不安が言葉を長くしていたという、私自身の若手時代と同じ現象だなと納得しました。

アプローチ4:1on1を「絞る訓練の場」にする

多くの企業で1on1が定着していますが、雑談で終わっていることも少なくありません。
これを、若手の「話を絞る訓練の場」にしてしまう方法があります。

やり方は、1on1の冒頭で必ず「今日話したいテーマを1つだけ選んで」と促すこと。
複数持ってきたら、「その中で今日一番話したいのはどれ?」と選ばせる。
「全部話したい」を許さない場を、週1回15分だけでいいので作るのです。

これは、絞ることそのもののトレーニングになります。
「取捨選択して、1つに絞る」を繰り返すうちに、日常の報告でも自然に軸が定まってくる。
派手な効果はありませんが、じわじわ効くタイプの指導です。

アプローチ5:本人が読んで学べる一冊を渡す

指導する側の労力を減らしつつ、若手に体系的に学んでもらいたいときは、書籍を渡すのが最も効率的です。
若手自身が読んで納得すると、上司から言われたときの何倍も定着が早い。

このテーマで最近読んで、若手指導にも自分自身にも役立ったのが、宮脇啓輔氏の『一言で話せ。仕事ができる人の1%会話術』(明日香出版社/2026年5月発売、224ページ、1,760円税込)です。

この本の面白いところは、「短く話す=単に情報を削る」ではないと明確に定義している点です。
ビジネスの会話は「相手に理解してもらうゲーム」ではなく「相手に判断してもらうゲーム」であり、そのために結論ファースト・枕詞での配慮・返答のすり合わせという3つの原則を用意している。
この視点は、若手が「短くする=手抜き」だと感じている恐れを解きほぐすのにちょうどいいのです。

会議準備の4ステップ(目的・ゴール設定/課題設定/進行イメージ/QA想定)も、私が研修で伝えている内容とほぼ重なっていて、若手が自習用に読むには最適な一冊だと感じました。

気になる方は、『一言で話せ。仕事ができる人の1%会話術』の書籍紹介ページで目次や特徴を確認できるので、まずは一度目を通してみてください。
若手に渡す前に、まず自分で読んでみるのがおすすめです。

書籍を渡すときのコツは、「読んでおいて」と丸投げしないこと。
「第◯章のこの部分、うちのチームで一番効きそうだから、そこだけでいいから読んでみて」と、範囲を絞って渡すと、負担感がなく実行してもらえます。

指導するあなた自身の「話の長さ」も棚卸ししよう

若手指導の話を書いてきましたが、最後に一つだけ、耳の痛い話をさせてください。

先ほど紹介したエン・ジャパンの調査では、部下が上司に対して感じる課題の1位が「指示・指導がわかりづらい」で48%でした。
つまり、「話が長い」問題は、若手だけのものではないということです。

ダイヤモンド・オンラインの記事には、「話が長いリーダー」の特徴として、自分の経験談を挟みすぎる、目的が最後まで明示されない、メンバーの集中力を奪う、といった点が挙げられています。
このどれかにドキッとするなら、まず自分の話の長さも一度棚卸ししたほうがいいかもしれません。

私自身、営業マネージャー時代に部下からの360度評価で「話が長い」と書かれたことが何度もあります。
自分では「必要なことを丁寧に話しているつもり」だったのが、部下からは「くどい」と映っていた。
このギャップを埋めるのは本当に難しく、今でも研修現場で「あ、また枕詞が長かった」と気づく瞬間があります。

もし体系的に伝え方を鍛え直したい場合は、JMAM日本能率協会マネジメントセンターのコミュニケーション研修一覧のように、読む・聞く・話す・書くを段階的に学ぶ体系型の研修も選択肢に入ります。
自己流のクセを直すのは、独学だとどうしても難しいので、こうした場を活用するのも一つの手です。

若手を指導する立場だからこそ、自分の伝え方も定期的にアップデートしていく。
それが結果的に、指導される若手からの信頼にもつながっていきます。

まとめ

若手の「話が長い」問題は、単に本人のスキル不足ではなく、恐れ・型の欠如・ゴール設定の甘さが絡み合った構造的な問題です。
「短くしろ」と繰り返すだけでは直りません。

今回紹介した5つの指導アプローチを、最後にもう一度整理します。

  • アプローチ1:報告冒頭に「今日のゴール」を一言添えさせる
  • アプローチ2:PREP法をメールで練習させる
  • アプローチ3:話す前に「結論2行メモ」を書かせる
  • アプローチ4:1on1を「絞る訓練」の場にする
  • アプローチ5:体系的に学べる書籍を渡す

一気に全部やる必要はありません。
まずは、いま目の前で困っている若手に一番効きそうな一手から試してみてください。
自分自身の話し方も、そのついでに見直せると理想的です。

若手の話が短くなると、チーム全体の会議時間が減り、意思決定が早くなります。
その積み重ねが、組織の生産性を静かに底上げしていくはずです。

最終更新日 2026年7月2日 by landru

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